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木下光学研究所『KISTAR 55mm F1.2』

TOMINON 55mm F1.2の復活

『KISTAR』というレンズ名を聞いてピンとくる方はまだ少ないかもしれない。
レンズ制作したのは東京・あきる野市に工場を構える『木下光学研究所』という会社。主に工業用レンズや試作レンズの設計・制作を行う会社なのだが、実はあの富岡光学の流れを汲む光学会社なのである。

レンズ沼に踏み入った者は必ず耳にする『富岡光学』という名前。高い技術力からヤシカ、リコー、マミヤ、ドイツのレヴューなど多数の国内外メーカーへレンズのOEM生産をしていた光学メーカーで知られ、後に会社の合併・社名変更などを経て、数多くの銘玉を残したCONTAXブランドのCarlZeissレンズを製造していたことで有名だ。

いまもなお「このM42レンズは富岡製か否か」など議論が巻き上がることもあり、CONTAX・Zeissレンズの源流である『富岡』の名は多くのレンズファンを魅了し続けている。
オリジナルブランドである『TOMINON』の刻印がある物は希少とされており、その中で『TOMINON 55mm F1.2』というレンズは国内のみならず海外でも高値で取引されているレアレンズだ。

今回ご紹介する『木下光学研究所』は『TOMINON 55mm F1.2』の光学設計を担当した木下三郎氏が創設した会社であり、『KISTAR 55mm F1.2』は、その富岡光学出身の技術者などが中心となって『TOMINON 55mm F1.2』を完全再現させた復刻レンズなのである。

日々進化するデジタル全盛期の今、半世紀近く前に製造された幻のレンズを復活させた想いとは何なのか、木下光学研究へ話を伺いに向かった。

Q:株式会社 木下光学研究所とは?

右:木下 勉氏/(株)木下光学研究所 代表取締役社長】左:船島 敏夫氏/(株)木下光学研究所 顧問】

右:木下 勉氏/(株)木下光学研究所 代表取締役社長
1964年(昭和39年)東京都あきる野市生まれ
生来機械が好きでバネや歯車に親しんで育ち、特に自動車が好きで、自身もカーレースに参加する。趣味を活かして整備学校を卒業後、自動車整備士になる。
その後父の立ち上げた木下光学へ入社。機械好きが功を奏し、今の仕事が楽しくてたまらない。

左:船島 敏夫氏/(株)木下光学研究所 顧問
1948(昭和23年)宮城県古川市(現大崎市)生まれ
大学卒業後、富岡光学に入社。現会長とともに木下光学を設立したメンバーの一人。
富岡光学時代から合わせると40年以上、レンズの光学設計一筋。
かつては様々なレンズメーカーの交換レンズに携わり、ズームレンズから単焦点まで幅広く設計したほか、フィルム・デジタルのコンパクトカメラも設計するなど、様々な会社の黒子に徹する。現在でも依頼があれば設計を行うとのこと。

木下氏:昭和53年に開業し、当初はマニュアルフォーカスの交換レンズの設計会社としてスタートしています。

創業者である父はかつて富岡光学に在籍しており、レンズの設計をやったのち、自分で交換レンズの設計会社を立ち上げました。その会社がこの木下光学研究所です。

時代の変遷とともに3rdパーティーの交換レンズのブームが落ち着きを見せて以降下火になり、製造の主軸が工業用レンズへと移っていきました。

工業用レンズについては設計と同時に製造も当社で行うようになり、自社工場も設けて今に至ります。
今の主力は設計の試作レンズと、工業用レンズ、さらには海外向けの監視カメラですね。そのほか特徴ある製品としては曲率を図るためのニュートン原器も作っています。

Q:『KISTAR 55mm F1.2』を製作しようと思ったきっかけは?

船島氏:私はもともとクラシックカー、とくに日産スカイラインGT-R(通称ハコスカ)など高度経済成長期の製品が好きでした。

質が良いんですよね。そこで、その時代に輝いていた製品を作りたいと思ったのが最初です。その時点では何をつくるかはきめていませんでしたが、現在の“高精細さ”を追求したレンズとは一線を画した、“レンズだけで絵が撮れるもの”をつくりたいと考えていました。普段作っている、監視カメラは、技術の進歩に伴い非常によく映ります。しかし、面白い映像”ではないですよね。

『TOMINON 55mm F1.2』が登場した1970年前後は東京オリンピックから大阪万博が開催された時代。木下氏も憧れた名車『日産 スカイラインGT-R(箱スカ:PGC10型/KPGC10型)』の登場、二輪量産車初の並列4気筒エンジンを搭載した『HONDA CB750FOUR(砂型鋳造の通称K0)』、最高峰の機械式シャッターを持つ一眼レフ『Nikon F2』など、日本の産業史に名を残す製品が多く誕生した時代である。

木下氏:「古いレンズをやろう」という大まかなコンセプトは決めていましたが、55mm F1.2に決めるまでには2ヶ月程かかりましたね。

船島氏:被写界深度が浅く、考えて使わないと扱えない、敷居が高いながらも機械を扱う面白さを味わえる製品だからです。そして、覗いた際に、主張する大きな前玉の格好の良さも決め手です。

Q:今回のレンズを製作する上で苦労した点・こだわった点を教えてください

  • レンズ

    今回発売する「KISTAR 55mm F1.2」復刻というと昔の図面をそのまま起こせば出来ると思いがちだが、様々な苦労と試行錯誤があって完成したレンズだ。

  • レンズ

    オリジナルの「TOMINON 55mm F1.2」この個体は「YASHINON」とダブルネームのレンズだ。発売から約半世紀、レンズに含まれているトリウムが黄色く変色していた。

木下氏:実際の製作まで入れると結構な人数がいますが、企画としては5人で行いました。

私の父で創業者でもある会長(木下三郎氏)と、当時TOMINONの機構設計を行った者(古川義規氏)にヒアリングを実施して参考にし、私が今回の機構設計、船島と設計部の部長(大森氏)が光学設計を担当しています。

船島氏:まず設計、数字で設計して個々の部品を図面に起こします。
そして材料を手配して金物は、加工してくれる業者さんに依頼、レンズは自分たちで作ります。大変なのは部品を結集した後です。図面の通り組むと期待した写りをしないことが往々にしてあるんです。
こういった場合はあえて規格をずらしたりしてチューニングします。

木下氏:こだわっている箇所はレンズの綺麗さです。
前から覗くことで、「大きなレンズが入っている」という気持ちが味わえるレンズに仕上がっていると思います。
外装はマウントに合わせて、かつてのヤシカ・コンタックスマウント風ものを再現しましたが、かっこよく仕上げるために内を大きく、外を小さくすることにこだわりました。

その為、小さなスペースにメカを詰め込むことが必要になってきます。立を担当した者が、適した締め付け具合などの作動感を見つけてくれました。相当苦労したと思います。

Q:オリジナルのM42ではなくヤシカ・コンタックスマウントにした理由を教えてください

木下氏:かつてのTOMINON同様にM42マウントにすると、マウントアダプターに絞り連動ピンが押されるような仕組みになるのですが、このレンズは後玉が大きくせり出しており、ピンを押すための壁を作ることが出来ないんですね。

そうなるとミラーレス一眼で使えないため、M42マウントはやめました。そして、もともとのTOMINONで培ったノウハウを活かせるよう、現在の形にしました。

レンズ

Q:どういったユーザーの方に使っていただきたいですか?

木下氏:私みたいに機械いじりが好きな方。自分でいじって撮りたい人ですね。

船島氏:そういう人しか使わないんじゃないかな?(笑)
露出からピントから自分で合わせて使う、という程レンズが好きな方に触って欲しいですね。

木下氏:とにかく明るいので、室内や日陰で照明を必要としないで撮影することや、近距離でのボケ味を生かした撮影を実施してほしい。

船島氏:そういう人しか使わないんじゃないかな?(笑)
露出からピントから自分で合わせて使う、という程レンズが好きな方に触って欲しいですね。

Q:最後にエンドユーザーに向けて一言お願いします

木下氏:乗り物とかの運転がそうであるように、癖を理解してうまく使って楽しんでいただきたいなと思います。

船島氏:このレンズでいろいろ経験してもらって、MFの良さを知ってもらいたいです。とにかくいじくりまわしてください。

日本の”真面目なモノ作り”を見てもらいたい

カメラの交換レンズは大規模な生産ラインで作られているイメージだが、『KISTAR 55mm F1.2』はこの木下光学研究所でレンズを磨き、職人の手によって組み立てられ、一つ一つ完成される。

製作現場を見学させてもらいながら、インタビュー中に木下氏が言った「このレンズを通して日本の“真面目なモノ作り”を見てもらいたい」という一言がとても心に響いた。
『KISTAR 55mm F1.2』の美しいレンズの輝きには日本の産業を支えてきた職人達の技術と想いが込められている。

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